夜寝る前までは調子が良かったのに、翌朝起きたら何故か重だるい腰や背中…。実はこれは私が理学療法士として働いてよく聞かれる悩みでもあります。
そのような方へ向けて、私がよくお伝えしていることや工夫できることなどをお伝えできればと思います。
朝起きた時の腰痛に悩んでいるのであれば、ぜひこの記事をご覧になってみてください。
この記事を書いているのは、当サイトの運営者である理学療法士のどかです。私はこれまで病院やご自宅にて病気や怪我などを背景とした、暮らしに問題を抱える患者さんや利用者さんへリハビリを行なってきました。リハビリを提供させていただく方の中には、朝起きた時の腰に悩みを持つ方が多く存在し、それがマットレスの変更により変化が見られるケースをよく見てきました。今回は私がマットレスの変更が必要だと感じるケースおよび、マットレスを選定する際の頭の中(過程)をシェアしていきたいと思います。
その腰痛、もしかして寝返り不足…?【朝起きたら腰が痛いあなたへ】
このお仕事をしているとよく聞かれる質問があります。それは、「寝る前までは平気だったのに、朝起きると腰が痛い。どうしたら良い?」と言うお話です。この質問はご高齢の患者さんだけでなくいわゆる健常なはずの私の友人や親戚など、比較的若い(30代前後〜60代)世代からも聞かれます。
そのような質問に対し、私はこのように問いかけます。「あなたは寝ている間何回寝返っていますか?」そのように聞くと、皆さんは口を揃えてこう言います。「寝返らないどころか、寝ている間ほとんど体勢を変えない。」重ねて、こうおっしゃいます。「寝返らないことの何がいけないの?」
理由は簡単です。そもそも健常な方は就寝中、20回寝返っているといわれているのです。寝返らない事自体が健常からかけ離れているわけです。
就寝中、寝返りが必要な理由と寝返り不足が腰痛を引き起こすワケ
就寝中、何度も寝返るのには理由があります。それは、寝ている間に体の一部に圧力がかかり続けるのを避けるためです。
圧がかかり続けると、腰や背中の骨や関節、皮膚、筋肉などに負担がかかります。さらには循環が滞ることで痛みの物質も溜まりやすくなります。最終的には起床時に腰や背中などの痛みとして自覚することがあります。
特に、仙骨と言われる腰の後ろの骨というのはあおむけで寝ている際に、一番圧(体の重み)がかかる部位であり、起床時に痛みを自覚されやすい部位でもあります。気になる方は、朝起床した際にお尻の後ろが赤くなっていないか確認してみて下さい。ちなみに、驚かれるかもしれませんが、このお尻の赤みは立派な「床ずれ(=褥瘡)」と言われる所見の一つです。
【できると大変】床ずれとは何か?介護が始まったら知っておきたい事
床ずれは、主にご高齢で自分では体を動かすことのできない方に起こることのある病気の一つであり、寝ている間にお尻の中央やかかとなどに「キズ」が発生してしまった状態です。
このキズというものは軽く皮膚がむける程度のものであったり、脂肪や筋肉などの組織から骨まで壊死してしまうケースもあります。ここまで悪化してしまう方は、【ご高齢・自力で身動きが取れない・栄養状態不良・痩せ】など様々な要因が複合した状況下で発生することが多く、医療や介護関係者でない限りは中々耳にするケースは少ないでしょう。
寝ている間、体の身動きをとる事ができない方の場合には、床ずれ予防として、医療者側から寝返りをサポートする支援を2時間に一回行わせていただく事もあります。
それほどまでに、寝ている間に体の一部分だけに圧力が加わり続けることは良くないことであり、避けなければなりません。つまり、人は就寝中に自然と寝返ることができる環境と体が必要なのです。
もしあなたが起床時に腰痛を自覚しており、さらに就寝中、寝返りをしていない場合には、寝返りをしやすい環境にしてあげましょう。
その環境を作るために大切なのは、「あなたの寝返りを妨げる原因が何かを知る事」です。
それではここから、あなたの寝返りを妨げている原因として考えられるものをいくつか挙げていきます。
寝返りを妨げる要因4つ
以下に寝返りを妨げる要因となりやすい原因を4つ挙げます。
- 寝返るための体の力や柔らかさが足りない
- 体が痛くて動かせない
- マットレスにスペースが足りない
- マットレスが柔らかすぎる
1. 寝返る力が足りないorやわらかさが足りない
そもそも寝ている間に寝返れるほどの体の柔らかさや力が足りないケースです。寝返り方は人それぞれであり、寝返り方により必要な筋力や柔軟性は変わってきますが、このような方は起きている時でも寝返りがうてません。実際にベッドで痛みもなく、左右に寝返ったり、体の位置を動かせればOKです。
なお、起きている時でも寝返りがうてない場合には、体の筋力や柔軟性などに何らかの原因がある事があります。このような場合には、整形外科などで原因を調べてもらい、必要に応じてリハビリを受けましょう。
2. 体が痛くて動かせない
寝返るための力や柔らかさは問題がないものの、体を動かそうとすること痛みが生じ、寝返ることができないケースです。まず、体が痛くて寝返れない状況は、放置してはいけません。このようなケースは整形外科へ受診し、原因をしっかり調べてもらいましょう。
3. マットレスが狭い
寝返ったり体を動かす際には、多少のスペースが必要です。そのスペースが少ないと寝返りが行えづらくなります。まずは今ご使用されているマットレスの上で楽に寝返ることができるかどうかを見てみましょう。そして明らかにスペースが足りない様であれば、少し幅のあるマットレスに変更することをお勧めします。
4. マットレスが柔らかすぎる
なぜやわらかすぎるマットレスで寝返りが妨げられるかというと、体がマットレスに沈みこみすぎるあまり身動きが取りにくくなってしまうからです。
あなたに理想のマットレスとは
「寝返り」と「マットレスの固さ」にはある種の相関関係があります。それはマットレスが固ければ、その反発力によって、寝返りは打ちやすくなり、逆にマットレスが柔らかすぎると体が沈み込むことで寝返りは打ち辛くなります。
そのため、あなたにとっての理想のマットレスは、あなたの体に心地よくフィットする柔らかさを持ち、さらにはあなたが寝返りやすい反発力を兼ね備えたマットレスということになります。今使用されているマットレスが柔らかすぎて寝返りが打ち辛い様であれば、まずは今よりも少し固いタイプをお試し下さい。
あなたに本当に合っているマットレスかどうかを見極めるためには、実際に寝てみて、寝返り、さらには一晩共に過ごしてみないと実際のところは分かりません。そのため、理想は色々なマットレスを取り扱っている販売店などで実際に寝てみる事です。
朝、起き抜けの腰の不調の解決に少しでもお役に立てたら嬉しいです。それでは、ここまで長文をご覧いただきありがとうございます。
現在介護をされている方へ
現在介護保険を利用されている方(要介護2以上)で、かつマットレスが合っていないと感じる場合には、福祉用具業者さんにマットレスを持ってきてもらい、お試しすることができます。要介護度が2よりも上の方の場合(要支援1〜要介護2)には、福祉用具のマットレスが必要であるという医師の指示書が必要です。マットレスが合っていないと感じた場合には、まずは担当ケアマネージャーに相談してみましょう。福祉用具のマットレス選びについては、こちらで解説しています。↓