こんばんは。
前回の投稿で、色々な種類の歩行器をご紹介して行きました。
歩行器の高さは、既存の調整機能によって調節する事が出来ます。そして、その方に合う高さの目安は、教科書やカタログに載っています。
ですが、その通りに調整してみても、「なんだかしっくり来ないな…」と感じた事はありませんか?
それは、良い姿勢を保てる高さと、使いやすい高さは必ずしも同じにはならない事が原因の一つかもしれません。
今回のターゲットとなる歩行器は、車輪が付いた手で持つタイプの歩行器に関してです。
1枚目のイラストに描いてある車輪付き歩行器の他、押し車やシルバーカーもこれに沿って調整する事が可能です。
腕で支えるタイプの歩行器については合わせ方が異なりますので、ご了承下さい。
私が病院勤務していた頃に、患者さんにどのように歩行器の高さを調整していたのかをご紹介していきます。
目的別高さ調整方法
一般的な高さの調整方法
身長による歩行器のハンドルの高さの目安は 身長÷2+2+5〜15cmといわれています。
ここからは、その方の姿勢を参考に高さを調整する方法を書いて行きます。
立った状態で軽くおじぎをする姿勢になります。肘は30°程に軽く曲げて起きます。
この高さが、比較的腕に力が入りやすくなり、足の力を補ってくれます。
頼りやすいので、楽に長く使いやすいといえます。
良い姿勢に焦点を当てた時の高さ調整方法
立つ姿勢を良い姿勢に近づけます。
(良い立つ姿勢の見方についての投稿はこちらからどうぞ。)
そして、良い姿勢の状態で先ほどの調整方法同様に、肘が30°位曲がった状態で歩行器を握りやすい位置に設定します。
使いやすい歩行器の高さとは?
楽に歩ける高さを考えるには、相手の方が楽に歩くのにどれくらい歩行器に頼ってもらったほうが良いかを考えます。
例えば、歩行器にかなり頼らなければ歩けない方の場合には、多少前かがみになって寄り掛かりやすくしなければ使いにくくなります。
対して、さほど歩行器に頼らず歩ける方の場合には、軽く支えられる程度の高さで調整してみていいと思います
高さを調整した後は何に気をつけたら良い?
一度高さを調整したら、その高さのまま連続して歩いてもらってみて、その方に合っているのかを姿勢の変化を見ながら確認します。
問題なさそうであれば、そのまま使ってもらい、後日改めて使っている時の姿勢や疲れ具合・痛みの有無などを確認します。
歩行器に頼り過ぎたり、実は結構疲れやすい高さであった場合には、肩に疲れが出てきたり、歩行器が高く感じる場合があります。
良い姿勢を保てる高さと使いやすい高さが一致しない理由
立つ姿勢や座る姿勢でお伝えしたように、良い姿勢では背筋や腹筋、お尻や腿の筋肉をしっかり使う必要があります。
(良い姿勢についての投稿はこちら)
私達ですらその姿勢を保つ事が難しいように、ご高齢になればなる程その姿勢を保つ事は難しくなっていきます。
そのため、良い姿勢を保てる高さで歩ける距離というのはその方の体の状態にもよりますが結構短くなりやすいです。
良い姿勢を保ち続けるのは疲れるのです。
良い姿勢を保てる高さに対して、使いやすい高さとは、その歩行器を持った時に持たない時と比べて安定して・楽で、それでいて比較長く歩ける高さです。
実用性を考えていくと、その方にあった高さとは後者の方に近くなるのではないかなと思います。
どのように使い分けていく?
日常的に長時間使っていく歩行器であれば、多少楽な姿勢に近づけて使いやすくした方が無難です。
ですが、良い姿勢を保てる高さの方が、練習用としては優れています。
そのため、一日の中で一定時間だけ(リハビリの時や決めた時間)、歩行器の高さを良い姿勢が保てるように高め設定するのは良いと思います。
私が病院に勤務していた頃、日常的に歩行器を使われている方であれば、リハビリの時間だけあえて少し高めに設定して、歩行練習で使っていました。
そして、リハビリが終わる前に、相手の方が歩行器を楽に使える高さに戻してから、終了します。
そう使っていく内に、徐々に筋力や持久力がついてきて、以前よりも姿勢よく楽に歩けるようになったら良いなと思いながら使い分けていました。
体の回復と共に、筋力や持久力がついていく内に、使いやすい歩行器の高さも変化していきます。
基本的には、筋力や持久力がついていく内に、姿勢が起きてくる事で、歩行器が高さはそれまでより高い方が使いやすくなる場合が多いです。
反対に、加齢や病気が原因で姿勢が低くなったり、足腰の筋力が衰えてきた場合には、それまでより歩行器が低い方が使いやすい場合もあります。
その方に合った歩行器の高さを決めるためには、定期的に体の状態や歩行器の高さを見直していただく機会を設ける事が大事かなと思います。
歩行器を使われる方が、より自分の体に合った高さで使えるように、あえていつもと違う高さで使ってみてもらう機会があっても良いかもしれませんね。