これまで4回にわたってお話をさせていただいた「透析を受けられている方の食事」シリーズですが今回が最終回となります。
今回はこれまでのポイントを振り返り補足をしたうえで献立例を紹介したいと思います。
【第一回】透析を受けられている方の食事の”適量”とは?
【管理栄養士執筆】透析を受けられている方の食事の”適量”とは?
透析導入することで「腎臓に悪いものは余計に食べない」という考えから「必要なものはしっかりと摂る」という考えに変わります。
これまで腎臓病の食事療法をしていた方はそれまでの1.5倍以上のたんぱく質を摂ることになります。
ただし、腎機能の低下に気づかず通常の食生活をしていた方はたんぱく質の制限を行うことになります。
食事内容を豊かにするためにたんぱく質調整食品も取り入れてもよいでしょう。
【第二回】透析を受ける方に”減塩”が必要な理由と対策
減塩を行うことで水分コントロールにもつながります。
塩分摂取量は1日当たり6g未満(調味料から摂る塩分としては4gを目安)が基準とされています。
調味料の「正確な計量」を基本として減塩の回でお話した工夫にチャレンジしてみてください。
【第三回】”カリウム”の基本と摂取量を減らす方法
「ゆでこぼし」または「水にさらす」がポイントとなります。
カリウムの回でも触れたようにレンジ加熱や蒸し料理では意味がありません。
水に溶けだしたカリウムを取り除いた(「ゆでこぼし」のゆで汁を捨てる)うえで炒め物や煮物、お鍋料理に使ってください。
【第四回】”リン”は不足よりも過剰摂取に注意が必要
食品添加物として使用されているリンの摂りすぎに注意です。
カリウムのように「ゆでこぼし」をしてもリンを減らすことはできません。
ハム、かまぼこ、スナック菓子などの食べすぎには注意しましょう。
【補足】透析と食事〜”水分”について〜
補足です。
水分については塩分の回でも少し触れましたが、「透析患者の食事基準」では水分に関して「できるだけ少なく(血液透析)」といった基準が示されています。
水分コントロールのためには、「いつも使っているコップの容量を知る」、「汁物やカレーなど水分の多い料理は1日1回までにする」といった工夫があります。
それでは具体的な献立例を考えてみましょう。
今回は食事の適量の回でも触れた身長160cmの方の食事内容を基準として考えてみましょう。
ここで紹介しているものはざっくりとした献立ですので正確な栄養計算はしていません。
予めご理解ただいたうえで参考にしていただければと思います。
【最後に】1食の献立例をご紹介
- ご飯
- 牛肉と里芋の甘辛煮
- もやしとにらのパプリカ和え
- 焼きエリンギの唐辛子和え
①ご飯
「ご飯」は白ご飯180gを基準としました。
今回はたんぱく質調整食品のご飯を使用していませんが、使用すればおかずのたんぱく質を増やして食事内容を豊かにすることができます。
②牛肉と里芋の甘辛煮
「牛肉と里芋の甘辛煮」は牛バラ薄切り肉(2枚強)、冷凍里芋(4個)、白滝(1/10玉)をしょうゆ、砂糖、みりんで味付けして煮たものです。
今回参考にしたレシピでは出し汁ではなく水を使っていました。
脂身の多いバラ肉を使うことでたんぱく質を抑えています。
また、いも類自体はカリウムが多いのですが冷凍里芋はすでに下茹でをされたものがパッケージされて売られているため生の物よりカリウムが少なくなっています。
③もやしとにらのパプリカ和え
「もやしとにらのパプリカ和え」はもやし(1/4袋)をそのまま、にら(1/6束)、パプリカ(1/8個)は適当な大きさに切って下茹でし、水気を切ってしょうゆ、ラー油、ごま油、こしょうで和えるというものです。
透析を受けられ炒る方の食事として考える場合はたっぷりの湯で茹でたり、食材ごとに新しいお湯を用意(お湯を使いまわさない)して下茹でするといった工夫が必要になってきます。
また茹でた後の水気をしっかり切るということもポイントです。
④焼きエリンギの唐辛子和え
「焼きエリンギの唐辛子和え」はエリンギ(2本)をたてに4~5つにさき、焼いて削り節、一味唐辛子で和えたものです。
このレシピでは塩を使っていなので塩分が0となっています。
このように料理名を聞いただけでは健康な方と同じようなものが食べることができます。
透析を受けられている方の食事として書店の健康・食事療法関係のコーナーにレシピ本が並んでいると思いますが、これまでのお話を読み返していただければ健康な方の食事から透析を受けられている方のための食事へアレンジすることもできることに気づいていただけるのではないでしょうか。
今回の「透析を受けられている方の食事」シリーズ(全5回)が必要とされている方のお役に立てれば幸いです。
かかりつけ管理栄養士
中野照規様