前回の投稿で、車椅子にどんな種類があるのかをご紹介しました。
本日は、「じゃあ、車椅子を選ぶ時にはどんな事に着目すればよいか?」という事をテーマに説明していきます。
車椅子を選ぶポイントは、車椅子を使用される方が、車椅子にどんな役割(機能)を求めているかによって選ぶポイントは少しずつ変わります。
車椅子にもとめる役割(機能)とは何か?
車椅子は、その名称1つをとっても、車(=移動)としての役割と椅子としての役割を持ち合わせています。
例えば、ご高齢で施設や自宅にいらっしゃる方で、車椅子に座る時間がとても長い方の場合には、車椅子の椅子としての役割は限りなく重要となります。
そのような方の場合には、座り心地や楽に姿勢を保てるかどうかで車椅子で過ごす時間が快にも不快にもなりえるのです。
つまり、この時に座り心地が悪い上に、自分で姿勢を変えられなかったり、苦痛な事を自分の口から伝える事が出来ない方だったら…
座っている間は長い時間辛い想いをする事になります。
また別の例を挙げると、車椅子を両手でこいで移動される方の場合を考えてみると、もちろん座り心地も大切なんですがこぎやすさも大切になってきます。
車椅子を両手で大きく漕ぎやすくしようとすると、肩周りを動きやすくするために背もたれは低いものが良かったり、車輪が自分の近くに位置している事も大切になってきます。(その方が力が入りやすいため)
このように、車椅子をどのように使うかによって車椅子に求める役割は少しずつ異なります。
続いては、求める役割によって着目するべきポイントについて説明していきます。
役割別:考慮するべきポイント
椅子としての役割
まずは車椅子に楽に座る事ができるか?という事とその人にとっての良い姿勢を保てるか?という事です。
腕や足を置く場所の高さ・背もたれや座る面の大きさ・形状によって体へのフィット感や姿勢は大きく変化します。
1つ1つのパーツ(腕置き・足置き・背もたれ・座る面)が体に合わないと、何かしらの違和感が出てきます。
それは、体の傾きだったり、ずっこけ座り・苦痛な表情として現れたりします。
そのため、体の大きさにパーツを組み替える事は出来るのか?また、サイズの調整がきくかどうかの確認はした方が良いです。
移動としての役割
移動としての役割、それは車椅子をご自分でこがれる方が、こぎやすいか?(操作しやすいか?)という点です。
この「こぐ」方法は使う人によってやり方が異なります。
多くの方は両手でこぎますか、足で動く方が楽な場合には両足でこぎますし、片側の手足が動かしにくい方であれば片側の手足で漕いでいきます。
また、電動車椅子を使う場合には、こぐ事を片手やあごで行えるタイプもあります。
ここでの注意点は、こぎ方によって車椅子のサイズの見方が若干変わるところです。
それでは1つづつ見ていきます。
両手でこぐ場合:車椅子をこぎやすいかどうかは背もたれの高さや車輪の位置が関わってきます。
特に、大きくこぐ場合には肩が動きやすいように背もたれは低めの方が良いです。
しかし、少しずつチョコチョコとこぐ場合には肩や背中はさほど大きく動かないので、背もたれは低くなくてもさほど問題はありません。
こぐ車輪の位置は、後ろよりも手が届きやすい前側に合ったほうが良いです。
体の近くにある事により、車輪を後ろから前に大きく回転させる事ができるので、1度の腕の動きでより遠くへいけます。
足でこぐ場合:
足でこぐ場合に注意すべき点は、座る面の高さを足置きに足を置いた状態で合わせてしまうと、いざこごうとすると足が地面に届きにくくなるところです。
そのため、足こぎをする場合には、足台から足を降ろした状態で座る面や肘置き部分の高さを考える必要があります。
これを基準で座る面の高さを調整すると、足置き台に足を乗せると膝が高く持ち上ってしまう事になります。
しかし、長時間休む場合などは、足置き台から足を降ろしてしまうのもありだと思います。
地面に直接足を付けることが出来るので、安定しやすいです。
片手片足でこぐ場合:この場合は少し悩ましい部分があります。
座面の高さをどちらの足の高さに合わせるのか?ということです。
つまり、もし右手右足で車椅子をこぐ時にこぎやすくするには座る面は低くする方がこぎやすくなります。
が、足置き台に乗った左足に対しては座る面が低すぎる形になってしまうためです。
この場合は、こぐ本人がどちらに合わせる方が楽か(便利か)を聞いて設定するしかないように思います。
乗り移りのしやすさ
もし車椅子からベッドや車に乗り移るとしたら、車椅子が乗り移りやすい機能を持っているかは大切なポイントです。
乗り移りやすい車椅子の機能とはなにかと言うと、乗り移る時の障壁の影響を最小限に抑えるための機能です。
例えばそれは肘置きを跳ね上げられる機能だったり、足置き台を取り外したり、外側に折り畳んだりする機能です。
1つづつ解説していきます。
はね上げ機能:肘おきを上に上げられる機能です。
ここが上げられると、乗り移るときにお尻に肘おきがぶつかりにくくなります。
スイングアウト機能:足おき台を含む脚部を外側に開いたり、取り外せたりする機能です。
乗り移るときにその部分に足がぶつかるのを防げます。
また、取り外す事により、乗り移る場所からの距離を近づける事ができます。
これが、乗り移りをお一人で立って行える様な方ならこの機能はそもそも不要だったりもします。
介助のしやすさ
重さ:
車椅子の重量は、使われている金属や機能の多さによって変わってきます。(機能が多く、サイズ調整がきくほど重くなる傾向があります。)
車椅子は基本的に車輪が回転する事によって動きますが、狭い場所などで車椅子を一時的に少し持ち上げて位置を微調整する場合があります。
そのような場合は、小柄な方や腰が弱い方などには大きな負担となってしまったり、そもそも動かせなくなる恐れもあります。
そのため、介助者が主に車椅子を押す場合等は車椅子の重さは要チェックです。
姿勢変換機能:
座る方の血圧が低くなりやすい場合や疲れやすい場合・姿勢の修正を行いたいときには、この姿勢変換機能があると便利です。
はね上げ機能:これは乗り移りやすさに書いた内容と同じです。
スイングアウト機能:同上
環境によって求める役割
屋内:屋内の部屋や廊下の広さによってはこの小回りできるかどうかは重要です。
日本家屋の廊下の幅が780mm、標準的な車椅子(自分でこぐタイプ)の幅が620〜630mmとします。
この車椅子で、廊下を直進する事は出来ても、方向を変えたり、廊下から部屋に入ろうとするのは厳しかったりします。
前の車輪は曲がれても、後ろの車輪は前の車輪との間隔によって曲がる角度が内側によってしまうためです。
もちろん、車椅子をこぐ方の技術にもよるのですが、直角に曲がるには850〜900mmが必要と言われています。
それを解決するために、廊下を大きくしよう!という訳にもいきませんよね。
その場合には小回りが利きそうな車椅子を選ばなくてはなりません。
その機能を持っているのが、「小回り機能」を持ち合わせた車椅子です。
屋外:
屋外に車椅子を車で持ち込むとしたら、車椅子の重量を持ち運べそうかどうかや、折り畳みが出来るかどうか確認する必要があります。
お一人で車椅子を車に積む場合には、自力で折りたたんで車に積まなければならないためです。
また、車は関係なく外でお一人で移動する場合には前車輪の大きさがどれくらいかでも登れる段差の高さが変わってくるので、上れる段差の高さの目安は聞きましょう。
もし電動車椅子に乗られる場合にはこれに加えて連続走行距離はみておけると良いです。
使おうとしている環境がどのような状況なのか?坂や段差はあるのか?距離はどれくらいなのか?を想像してみましょう。
まとめ
上記に、車椅子選びで考慮するべきポイントについていくつか挙げさせて頂きました
車椅子を選びに大切な事は、車椅子を使われる方の体がどのような状態なのか?そして、どこでどんな目的で車椅子を使いたいと考えているかをイメージしておくことです。
選ぶ際に、その理由を業者さんの方からも尋ねられると思いますが、予めそれを考えて置くことで、話しがスムーズに進みやすくなると思います。
車椅子を検討する際には、お一人で悩むのではなく、誰かに相談してみることをおすすめします。
例えば、入院中出あれば主治医やリハビリスタッフ、
ご自宅の場合にはケアマネージャーさんや福祉用具の業者さんに相談する所から始めましょう。
車椅子の選び方について、わかりやすく解説してくれている業者さんのサイトを見付けたので、そちらを添付しておきます。
車椅子は介護保険が適応されてレンタルが出来るものが多くあります。色々な種類を実際に使ってみて、体や生活に合うものが見つかると良いですね。