今回は透析を受けられている方の「減塩」についてのお話していきます。
透析を受ける方に減塩が必要な理由
まず、なぜ減塩が必要になるのかお話したいと思います。
血液透析は通常週に3回程度の頻度で行われます。そのため次の透析までの間に摂った水分は体内にたまります。
水分がたまりすぎると血圧が上がって動脈硬化や心血管障害のへとつながっていきます。
つまり、水分のコントロールが大切になるというわけです。
塩分(正式には「食塩相当量」という言葉を使いますが、本記事では「塩分」と表します)を摂りすぎた時にはのどが渇いて水分を飲む量が増えてしまいます。
つまり、体内に水がたまりやすくなるという事です。これが先ほどの水分のコントロールと関係します。このため塩分のコントロール(減塩)が必要になってくるのです。
健常な方と透析を受ける方の一日の塩分量の目安は?
では、現在私たち日本人は1日当たりどの程度の塩分を摂っているのでしょうか?
基本的に毎年「国民健康・栄養調査」と呼ばれる大規模な調査が行われています(コロナ禍の影響で令和2年、3年は行われませんでした)。
全体平均が10.1g、男性は10.9g、女性は9.3gとなっています(令和元年分データ)。
これらの数値に対してどのように感じますか?
おそらく「高いのだろうな」と思われるのではないでしょうか。
健康な方で男性の場合7.5g未満、女性の場合6.5g未満が目標値とされています。
では肝心の透析を受けられている方の基準値はいくらなのでしょうか?
「透析患者の食事摂取基準」では1日当たり6g未満とされています。
この6g未満には調味料以外から摂る塩分も含まれるため調味料から摂る塩分としては4gを目安にするとよいでしょう。
前置きはここまでにして具体的な減塩の方法についてお話をしていきましょう。
美味しく減塩する方法
おそらく「減塩=薄味にする=おいしくない」というイメージがあるのではないでしょうか?
減塩をする際の基本的なこと、塩分を減らしてもおいしく食べるためのコツを次のようにまとめました。
- 調味料は計って使う
- 旨味のある「だし」をきかせる
- 香辛料(カレー粉、こしょうなど)・香味野菜(しょうが、しそなど)を活用する
- 酸味(酢、レモンなど)をきかせる
- 焼き色をつけて香ばしくする
- トロミをつけて味を全体にからめる
- 塩分の多い加工食品(漬物、ウインナー、ちくわ、魚の干物など)は食べ過ぎない
- 汁物は1日1回までにする
- 旬の新鮮な食材を使う
- 主食はできるだけ塩分のない白ご飯にする
さて、ここまでお話して「あれが出ていないのでは?」と思われた方もいるかもしれません。
そうです、減塩しょうゆや減塩みそなどの「減塩調味料」です。
【透析を受けている方は注意!】減塩調味料の落とし穴
実はこの「減塩調味料」、透析を受けられている方は注意して使う必要があります。
そもそも減塩調味料の中には塩化ナトリウムの半分を塩化カリウムに置き換えて塩味を出しているものがあります。
詳しいお話はカリウムの回でお話しますが、透析を受けられている方はカリウムも制限しなければならない栄養素なのです。
高血圧の方であれば問題はないのですが、今回のケースでは注意が必要になってきます。
では最後に一般的な調味料の塩分について触れておきたいと思います。
- 食塩 小さじ1(6g)・・・5.9g
- 濃口しょうゆ 大さじ1(18g)・・・2.6g
- 淡口しょうゆ 大さじ1(18g)・・・2.9g
- 合わせみそ 大さじ1(18g)・・・2.2g
- ウスターソース 大さじ1(18g)・・・1.5g
- トマトケチャップ 大さじ1(18g)・・・0.5g
調味料だけでなく塩分の多い食品の塩分量と目安量がまとめられた本などもあります。
書店の健康・食事療法関連のコーナーをチェックしてみてください。
筆者が減塩に置いて最も大切と感じること=「正確な計量」
ここまでお話しましたが、減塩のために最も大切なのは「正確な計量」ではないでしょうか。
食事作りは毎日のことなので目分量で簡単に作ってしまいたいところですが正確な計量は譲れないポイントになってきます。
もし、今はまだ計量ができていないということであれば計量スプーンや計量カップを料理中にすぐに取り出せる場所に移動させるということからチャレンジしてみましょう。
毎食計量するという手間のかかることでもスモールステップで始めれば習慣化しやすくなるのではないでしょうか。
かかりつけ管理栄養士
中野照規様