これまでよく解説してきた福祉用具は、介護保険制度における福祉用具がほとんどでした。
同じく福祉用具である補装具を利用する際の仕組みは、介護保険の場合と少し異なります。
上の図は、私が最初に投稿した「福祉用具について」の投稿のイラストです。
このイラストの左側のおじさんがつけているコルセットは、福祉用具の中の「補装具」にあたります。
本日は、この補装具は何なのかという事と、どのようなものがあるのかという事を書いていきたいと思います。
補装具とは?
補装具とは、障害を患う方が、失われた体や機能を補うために使われる福祉用具です。
脳卒中で片足が動きにくくなった方が治療に使う足の装具や、腰を骨折した方が安静を目的に一時的につけるコルセット、難聴になった方が耳につける補聴器など…たくさんあります。
介護保険制度における福祉用具(既製品)と大きく異なる点は、補装具は作成に専門的な知識や技術を要することです。
作成にあたっては、医師や義肢装具士などの専門職が関わっていきます。
補装具にはどんなものがあるの?
補装具は、種類によって大きく16種類に分けられています。
ここでは、身近な補装具を一部ご紹介していきます。
義肢
腕や足の一部を失った場合に、その部分につける代わりの補装具です。見た目を補うための義肢や、実用性を目的とした動く義肢もあります。
装具
図の左は、脳卒中で左側の麻痺になってしまった方が付けている足用装具です。
右は首の病気(頸椎症など)で手術した後に安静のためつけている首用装具です。
この他にも腕や足、体に障害を受けた時に使います。
該当する体の部分を安静に保つためであったり、体にとって良い姿勢を保つための装具や、動きを補うための装具もあります。
盲人安全杖
白い杖です。歩いている時に、歩く先の道の状態を知るために使います。
また、その杖を持っている事で、他者へ視覚に障害がある事を周知する事もできます。
補聴器
難聴によって不足している聴力を補います。
耳の穴の中に入れるタイプ、耳にかけるタイプ、本体はポケットに入れるタイプなどがあります。
車椅子
歩く事や、長時間歩く事が難しい方が、移動をするために使います。
介助者に押してもらい移動するタイプや、自分で漕いで移動するタイプがあります。
歩行器
病気や怪我などをきっかけに歩く時のバランスが不安定な場合や、足の踏ん張りが聞き辛い時に使います。
座位保持装置
自力では座る姿勢を保てない、もしくは長時間座る姿勢を保つことが難しい場合に使われます。
座る姿勢を保つことだけでなく、その姿勢を保つことによって息をしやすくしたり、腕や手を動きやすくする効果も期待できます。
上記のほかにも、義眼、眼鏡、電動車椅子、歩行補助杖があります。
そして、18歳未満の場合にはこれに加えて、
座位保持椅子
座る姿勢が崩れないようにかつ、リラックスしたり、姿勢が崩れても元に戻せるような機能を有する椅子です。
・立位保持具:自力では立つ事が難しい場合に、使われる用具です。体や腰・足を固定しながら、立つ姿勢を保つことができます。
下の図は若干ものが異なりますが、このように立つ姿勢をキープしてくれるようなものを木材を主材料として作ります。
頭部保持具
座る椅子に装着して使用します。頭をしっかり起こせるような機能を持ちます。
排便補助具
普通のトイレでは排便が難しい場合に、排便がスムーズに行えるようにするためのものです。
なども対象となります。
介護保険制度における福祉用具の中にも、車椅子や歩行器があります。
もし、介護保険を受給している方で、必要となった補装具が介護保険制度における福祉用具にあるものであれば、介護保険の給付となります。
しかし、介護保険制度における福祉用具の場合には数ある既製されている物の中から選ばなくてはならなくなります。
そのため、体に合うもがない場合には、補装具として給付してもらう事が可能となる場合もあります。
補装具の費用が支給されるまでの手続きは?(支払いは償還払い)
厚生労働省が定める支給限度額の範囲内であれば、原則一割負担で購入する事が出来ます。
ですが、支払い方法は償還払いという方法であり、利用者は一度は全額を支払う必要があります。
そして、後で9割の料金が還付されるというシステムです。
適用される保険は、利用者が持っている保険や補装具が必要となった状況によって変わります。
障害者総合支援法、医療保険、労災保険などがあります。
障害者総合支援法とは、障害を患ってしまった方が、日常生活や社会生活をなるべくスムーズ送れるように支援する仕組みの事です。
障害者総合支援法が定めたサービスの総称を、障害福祉サービスといいます。
(障害福祉サービスを受けるためには、身体障害者手帳が必要になります。)
そして、障害福祉サービスの1つに、購入した補装具の費用9割を後から支給してもらうことができる制度があります。
これを、補装具費支給制度といいます。
補装具の費用を支給してもらうために、障害者総合支援法が利用されるかどうかは、補装具が必要となった状況や、利用者が関わっている保険によっても異なってきます。
例えば、必要な補装具を治療用として使っていく場合には原則医療保険が適応されますし、労働中に生じた怪我や病気がきっかけであれば、労災保険が適応されます。
ここでの注意点は全ての方が障害者手帳を利用して作成するわけではないという事です。
他に利用できる保険があれば、そちらが優先して使われます。
ここで、補装具がもし必要となった場合の、手続きについて書いていきます。
1.補装具が必要となった利用者は、住まいの市町村の役所へ補装具の費用支給の申請をする
2.役所は、補装具の費用の支給が適切か構成相談所等へ相談し、審査を行う。支給の可否を決定する。
3.支給決定を受けた利用者は、補装具業者に補装具費支給券を提示し、補装具の購入についての契約を結ぶ
4.補装具を作ってもらった利用者は、その料金を補装具業者へ一度支払う。
5.利用者は、補装具購入でもらった領収書と、補装具の申請書と、補装具費支給券を持って役所に請求しに行く。
6.役所が、利用者からの請求を正当と認めた場合に、補装具費の支給を行う(※作成にかかった額の9割が支給されます)
尚、補装具を修理する際も同じ工程です。
生活保護の方が治療用として装具を作成する場合には、4.の料金の支払いは不要になります。
介護保険対象の福祉用具と異なり、補装具は、何か病気や怪我のきっかけで必要になることがほとんどかと思います。
支給までの流れを参考までに書きましたが、補装具が必要となった際には、多くは入院先の病院から提案されることが多いと思います。
補装具を必要と感じたり、なにかわからないことがある場合には、まずは市町村の役所に問い合わせてみるのが良いかと思います。
「あぁ、介護保険制度の福祉用具の他に、このような福祉用具もあるんだね」と思っていただければ幸いです。