「退院後、入院していた家族が新たにベッドを使用する事になった…。」
突然必要になっても、毎日長い時間を共にするマットレスを選ぶ事は、難しい上に慎重になってしまいますよね。
マットレスは、寝心地が良い以外にも、寝返りが行いやすいかどうかがとても大切です。
本日は、体の状態に応じた、マットレスを選ぶ際のポイント・注意点などをお伝えしていきます。
自分の力で寝返る力があるかどうか
ご高齢の方のマットレスを選ぶ場合に、留意しておくポイントは、寝返りが自分の力で出来るかどうかです。
寝返る力がないくらい体が動かない場合、ベッドで寝ている間1ヶ所に圧が加わり続ける事によって床ずれ(※)が発生してしまう危険があるためです。
人は寝ている間20回前後寝返っています。その寝返りを通して体の一部分に循環が滞ってしまうのを予防しているのです。
そのため、寝返りが出来ない方の場合には、床ずれをしないために体の圧を上手く持続的に逃がしてくれるマットレスを検討する必要が出てきます。
床ずれ防止用のマットレスは、圧の分散に優れている機能が備わった特殊なマットレスです。
空気の力を利用した電動タイプもあります。エアーマットレスまたは耐圧分散マットレスで検索してみましょう。
※床ずれ(褥瘡)とは:
体の一部分に持続的に圧力が加わり続ける事によって、循環が滞りその部分が壊死してしまう事です。
床ずれはその進行度合いによって治るのにとても時間がかかる怖いキズ(瘡)です。
マットレスの材質と固さの関係
マットレスは、スプリングタイプ、高反発ウレタン、低反発ウレタンなど様々な材質があります。
実際には、どれか1つだけの素材で出来ているマットレスは珍しく、色々な素材が組み合わさって出来ているものが多いです。
ここでは、よく見られる5タイプを固い順に、その特徴と併せて書いて行きます。気になるマットレスがあれば、まずは寝たり、寝返ったりしてみましょう。
高反発ウレタン(固め)
グッと手でマットレスを押しても反発力があるのですぐ戻ります。この特徴から寝返りが比較的行いやすい素材になります。
ですが、体の形にフィットはしにくくなるため、ベッド上でほとんど動けないような方の場合、骨がとがっているような場所(お尻や踵)には圧が集中しやすく痛くなる場合もあります。
網状マットレス(やや固め)
ポリエステルや樹脂のような線維が絡みあって出来ており、通気性が良いです。適度な反発力もあるため、寝返りもしやすいです。
比較的しっかりとした寝心地のため、骨がとがっているタイプの方は少し痛くなる場合があるかもしれません。
スプリングタイプ(やや固め)
細い金属が渦巻いたようなタイプで連続してくっついている物もあればポケットコイルのように1つ1つのコイルが独立しているものもあります。
ポケットコイルのように1つ1つのコイルが独立しているタイプは、体の各部位に合わせて沈み込んでくれるので、フィット感が得られます。
そしてバネの反発力があるため寝返りも行いやすいです。加えて、コイルには隙間が多いので通気性に優れています。汗をかきやすい方には良いと思います。
低反発ウレタン(柔らかめ)
手でグッと押すと、しばらく元に戻ってこない素材です。柔らかい素材なのでフィット感があります。
骨がとがっているような場所でも圧力が比較的集中しにくいです。ですが、体が沈み込みやすい分寝返りが行い辛くなる場合があります。
エアータイプ(とても柔らかめ)
床ずれ(褥瘡)の予防や治療用のマットレスとして使われる事が多いです。モーターがついており、圧が高い部分を感知したら圧を逃がしてくれます。
また、経時的に圧が増えたり減ったりしながら一部に循環が滞るのを防ぎます。(種類によって少しずつ機能は異なります。)
難点として、柔らかい分動く時にベッドが大きく凹むので、介助をする側は少しヒヤヒヤします。
マットレスの厚みについて
全てがそうとは言い切れませんが、一般的にはマットレスは厚みがあるほど、体の圧力が分散しやすくなります。
柔らかい素材だけでできた5cm程度の薄いマットレスは、お尻や背中など、体の中でも比重が思い部分が沈み込みすぎて底に付きやすくなります。
痛みの原因にもなりますので、ほかのマットレスと重ねて使用する場合を除いては単体での使用は避けた方が良いでしょう。
体重による理想のマットレスの高さの目安は決まった目安はないようですが、床ずれ防止を目的としたマットレスのほとんどは12cm以上の厚みがあります。
ここでの注意点として、厚みがありすぎると、床から離れた結果起き上がった時に足が付かなくなってしまう場合があります。
ベッドフレームの高さで調整が効けば良いですが、小柄な方に高さのあるマットレスを選ぶ際には、足がしっかり地面に付くか確認してあげて下さい。
その他留意点
柔らかフィット感と動きやすさを同時に得る事はなかなか難しい
柔らかいマットレスは、一見気持ちよくはあるのですが、柔らかさが強いと体の沈み込みも深くなります。
結果として、体が動かしにくい方であれば寝返りや起き上がりが行い辛くなったり、腰痛持ちの方であれば腰が沈み込み過ぎて痛くなるという事も考えられます。
そのため、マットレスには程よい固さや反発力も必要なのです。かと言って固すぎるマットレスは腰や踵などの出っ張った骨に集中的に圧力が増してしまうため固すぎても良いというわけではありません。
なのでその方に合った固さは実際に寝てみて確かめる必要があると思います。
体に本当に合っているのかは、一晩寝てみないとわからない…
上記の通り、マットレスの上では、仰向けや横向き、うつぶせなど様々なスタイルで寝ること以外にも、寝返りや体のわずかな動きも行います。
その場で寝てみて気持ちよくても、一晩寝てみると「あれ、なんだかちょっと腰痛いな…」なんて事もありえますので、介護保険でマットレスを利用するのであれば、極力レンタルをオススメします。
自分の体フィットしていて、且つ寝返りも行いやすい、そんなマットレスと出会えると良いですね。